公共工事とは?メリットとデメリットを分かりやすく解説
公共工事について、「安定した仕事だ」「景気に左右されない」といったポジティブなイメージを持つ一方で、「手続きが複雑で面倒だ」「価格競争が激しくて利益が出にくい」といったネガティブな印象を抱えている方も多いのではないでしょうか。
たしかに、公共工事は民間工事とは発注者や目的、資金源、手続きなど多くの点で違いがあります。しかし、これらの違いを事前に理解し、メリットとデメリットをしっかりと把握しておくことが、公共工事への参入を成功させる鍵となります。公共工事への参入は、企業にとって事業の軸を増やし、持続的な成長を実現するための重要な戦略になりえます。
この記事では、公共工事の基本的な定義から民間工事との違い、そして受注するメリット・デメリットについて、皆さんに分かりやすく解説していきます。公共工事への参入を検討されている方も、すでに関わっている方も、ぜひ今後の経営戦略のヒントにしてみてください。
目次
- ・公共工事とは?その定義と重要性
- ・公共工事の基本的な定義
- ・公共工事が社会に与える影響
- ・公共工事の主な種類と具体例
- ・公共工事と民間工事をカンタン比較
- ・目的と資金源の違い
- ・発注プロセスの違い
- ・公共工事を受注するメリット
- ・公共工事を受注する上で課題となりやすい点
- ・公共工事への参入を成功させるための重要ポイント
- ・公共工事への参入を検討されている方へ
公共工事とは?その定義と重要性
まず、公共工事がどのようなものか、基本的なところから見ていきましょう。公共工事とは、国や地方公共団体(都道府県、市町村など)が発注者となり、税金や公的資金を主な財源として行われる工事のことです。これらの工事は、国民や地域住民の安全で快適な生活を支えることを目的としています。具体的には、道路、橋、上下水道といった社会インフラの整備や、学校、病院、図書館などの公共施設の建設・改修などが含まれます。公共工事は、私たちの生活に不可欠な社会基盤を築き、維持するために不可欠なものです。
公共工事の基本的な定義
公共工事は、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入札契約適正化法)」という法律に基づき、「国、特殊法人など、または地方公共団体が発注する建設工事」を指します。
公共工事は、公共の利益を最優先に考えて実施されるため、公正で透明性の高い方法で進められることが求められます。このため、入札制度を通じて受注者が決定されることが大きな特徴となります。
公共工事が社会に与える影響
公共工事は、単に社会インフラを整備するだけでなく、経済全体にも大きな影響を与えています。
- ・経済の活性化:
大規模な公共工事は多くの雇用を生み出し、地域の経済を活性化させます。
工事に携わる建設業者だけでなく、資材業者や関連サービスを提供する企業にも仕事が生まれるため、経済の好循環を生み出します。 - ・生活環境の改善:
新しい道路ができれば物流がスムーズになり、移動時間も短縮されます。上下水道が整備されれば、清潔で安全な水を安定して供給できます。こうした生活環境の改善は、住民の生活の質を向上させることに直結します。 - ・地域のレジリエンス強化:
災害に強いまちづくりや、老朽化したインフラの改修・補強も公共工事の重要な役割です。これにより、地震や豪雨といった自然災害が発生した際の被害を最小限に抑え、地域の復旧力を高めることができます。
公共工事の主な種類と具体例
公共工事と一口に言っても、その種類は多岐にわたります。主な工事の種類には、建築工事、土木工事、管工事、電気工事、造園工事などがあります。
- ・建築工事:
役所、学校、図書館、公営住宅などの公共施設の建設や維持管理を行う工事です。
市民が日常的に利用する建物を手掛けるため、建物の安全性や機能性が特に重視されます。 - ・土木工事:
道路、橋、ダム、トンネル、上下水道など、地面や建物の基礎に関連する工事です。土木工事は私たちの生活を支えるインフラそのものと言え、特に公共工事に占める割合が高い工事です。 - ・管工事:
冷暖房設備、給排水設備、ガス管など、液体や気体を送るための管に関連する工事です。水道工事の多くがこれに該当します。 - ・電気工事:
発電所、送電線、街灯、公共施設の配電など、電力供給に関する工事です。
社会の機能を維持するために不可欠な工事です。 - ・造園工事:
公園や緑地の整備、街路樹の植栽など、都市の景観を整え、住民に安らぎを与える空間をつくる工事です。
公共工事と民間工事をカンタン比較
公共工事と民間工事は、同じ「工事」であっても、発注者や目的が大きく異なります。この違いをしっかりと理解しておきましょう。
項目 | 公共工事 | 民間工事 |
---|---|---|
発注者 | 国、地方自治体、独立行政法人などの公的機関 | 民間企業、個人 |
目的 | 公共の利益、社会インフラの整備 | 企業や個人の利益追求 |
資金源 | 税金、公的資金 | 自己資金、銀行融資、民間投資など |
発注方式 | 競争入札、指名競争入札が主 | 相対契約、見積り合わせなど柔軟 |
規制 | 厳しい法的規制、品質基準 | 比較的緩やか、発注者の意向に左右される |
目的と資金源の違い
公共工事は、税金を原資としているため、国民の税金を無駄にしないよう、コスト意識が非常に強いです。発注方式として競争入札が採用されるのもそのためです。一方、民間工事は企業の利益を最大化することが目的であり、発注者の意向やビジネス戦略が強く影響します。
発注プロセスの違い
公共工事の発注プロセスは、公平性と透明性を確保するため、入札制度を通じて行われます。入札に参加するためには、建設業許可の取得や経営事項審査(経審)の受審など、多くの手続きが必要です。
入札参加資格を得たうえで、案件ごとに応札し、落札することで契約となります。一方、民間工事は、発注者が自由に依頼先を選定できるため、より柔軟なプロセスが可能です。
公共工事を受注するメリット
公共工事への参入には、多くの魅力的なメリットがあります。
安定した収益の確保
公共工事は国や地方自治体が発注するため、民間工事に比べて景気変動の影響を受けにくいという特徴があります。これにより、長期的かつ安定した収益を見込むことができ、経営の安定化につながります。
特に、民間工事が低迷している不況時でも、公共工事は一定の発注量が見込めるため、企業の事業継続性を高める上で非常に有効な手段となります。また、公共工事では前払い金制度があるため、資金繰りがしやすくなるというメリットもあります。
社会的信用の向上
公共工事を受注できるということは、国や地方自治体といった公的機関から、その企業の技術力や経営の健全性が認められたことを意味します。これにより、企業の社会的信用が向上し、他の民間工事の受注や金融機関からの融資においても有利に働くことが期待できます。公共工事の実績は、いわば「お墨付き」となり、企業のブランド価値を高めることにつながります。
技術力の向上と経験の蓄積
公共工事は、民間工事ではなかなか経験できない大規模なプロジェクトや、高度な技術が求められるものが多々あります。
こうした工事に携わることで、新しい技術を導入する機会に恵まれ、社員の技術力向上や人材育成にもつながります。また、複雑な手続きや厳しい品質管理に対応する中で、社内の業務体制が強化され、組織全体のスキルアップにもつながります。
事業継承の増加
公共工事に取り組むことで、事業の担い手不足を解決し、事業継承の機会を増やすことができます。公共工事で実績を積むことは、事業の価値を高め、後継者やM&Aの相手を見つけやすくすることにもつながります。
公共工事を受注する上で課題となりやすい点
メリットが多い公共工事ですが、注意すべき点も存在します。
競争の激しさと入札の難しさ
公共工事の入札には多くの企業が参加するため、競争が非常に激しいです。特に価格競争が厳しく、利益率が低くなる可能性も考慮しなければなりません。落札するためには、確かな技術力や過去の実績をアピールするだけでなく、他社に負けないアプローチ方法を練ることが重要となります。
煩雑な手続きと膨大な書類
公共工事を受注するためには、入札参加資格の取得から始まり、入札書類、施工計画書、品質管理報告書など、多岐にわたる書類の作成と提出が求められます。これらの手続きは非常に煩雑で、多くの時間と労力を要します。初めて参入する企業にとっては、これらへの対応が大きな負担となることがあります。
予算制約と納期の厳守
公共工事は税金が使われるため、予算が厳格に管理されています。また、工期も明確に定められており、遅延は許されません。計画通りに工事を進めるための徹底した進捗管理とコスト管理が非常に重要となります。
予期せぬトラブルが発生した場合でも、納期を守るための柔軟な対応力が求められます。
公共工事への参入を成功させるための重要ポイント
公共工事への参入を成功させるには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。
- 経営審査事項における総合評価値を上げる :
公共工事の入札に参加するためには、経営事項審査(経審)を受けることが必須です。
経審では、経営状況、経営規模、技術力、労働状況などが数値で評価され、この総合評定値が高いほど、より規模の大きな工事や、競争率の高い工事の入札に参加できるようになります。この評価値を上げるためには、完成工事高や自己資本額向上だけでなく、技術者の採用や育成にも力を入れることが重要です。 - 採用・育成への投資と紹介エージェントの攻略 :
公共工事を受注できる案件を増やすためには、技術者や資格者を増やすことが不可欠です。しかし、建設業界は常に人材不足の課題を抱えています。そこで、人材紹介エージェントを効果的に活用することが重要です。
単に求人票を登録するだけでなく、毎月具体的な指示を出し、競合に負けないアプローチ方法を練ることで、潜在的な人材層を掘り起こし、適切な人材を確保する仕組みを作ることができます。
公共工事への参入を検討されている方へ
公共工事への参入は、安定した経営基盤を築き、企業の持続的な成長を加速させる大きなチャンスです。しかし、煩雑な手続きや厳しい競争など、乗り越えるべき課題も存在します。特に、初めて参入される方は、何から手をつければ良いのか悩むこともあるかもしれません。
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